薬剤師の気ままブログ

精神科門前の管理薬剤師。勉強したことの備忘録(薬や病気)やたまに趣味などについて気の向くままに書いていきます。

無顆粒球症について

しばらくの間精神科の薬ばかり触っていますと、久しぶりに内科の薬を触った時に基本的な知識が抜けていることがあります。

先日久しぶりにメルカゾールを触りました。メルカゾールの有名な副作用に無顆粒球症があることは薬剤師であれば誰でも知っているはずです。さすがに無顆粒球症が頭からすっかり消えてしまうことはありませんが、細かいところが抜けていたので、服薬指導前に急いで調べて検査値を確認しました。

精神科の薬の副作用にも無顆粒球症はありますが、ほぼほぼ起こりません。クロルプロマジンでは見たことがありませんし、クロザリルはクリニック外来レベルの病態には使用しませんので、扱ったことはありません。

今回は無顆粒球症について復習します。

 

  • 無顆粒球症とは好中球が著しく減少する副作用
  • 検査値は顆粒球がほぼ0または500/μL以下で、赤血球や血小板の減少はない
  • 自覚症状は突然の高熱、寒気、咽頭
  • 機序はアレルギー性と中毒性がある。アレルギー性では薬品(ハプテン)が好中球に結合し、好中球が貪食されてしまう。中毒性では薬品が顆粒球の前駆細胞を直接障害する。
  • アレルギー性の薬品は抗甲状腺薬、アミノピリン、金製剤など。中毒性はクロルプロマジン、プロカイン、βラクタムなど。
  • リスク因子は高齢、女性、腎機能低下、自己免疫疾患の合併など。
  • 甲状腺薬は用量非依存性、サラゾスルファピリジンは用量依存性。
  • チアマゾール(メルカゾール):用量非依存性。投与開始後3ヶ月以内が高頻度。発症頻度は0.2~0.5%(200人~500人に1人程度)

 

文献に記載されている症例では、チアマゾール15mg投与27日目に39℃台の発熱があり、WBC1100、好中球0%となっています。チアマゾール中止とC-GSF投与により9日で回復が見られています。

目を疑うような検査値です。本当に好中球が0になるんですね。本を読んで勉強しているだけではいまいちピンとこないことも、症例を見ると現実感が持てて良い勉強になります。

メルカゾールの服薬指導ではWBCやSEGまたはNEUT、強い風邪症状の確認が大事ですね。

ちなみに、この症例では皮膚掻痒感に対しメキタジン6mgが投与されています。バセドウ病では甲状腺機能亢進に伴い血管拡張、多汗、皮膚温上昇などが生じ湿疹や掻痒感が出るようです。たしかに熱いお風呂に入ると痒くなったりしますよね。バセドウ病のいわゆる主症状ではないので知りませんでした。良い勉強になりました。

 

クロルプロマジンでの無顆粒球症を見たことがないのは用量依存性だからかもしれません。抗精神病薬の選択肢が多様な現在において、クロルプロマジン統合失調症治療の主剤とすることはほとんどありません。よく使うのは不眠や不安、興奮、衝動性、易怒性などに対して25~150mg程度です。無顆粒球症が発現するくらい、つまり中毒となるくらいの量を使うことがほぼないので無顆粒球症が起きないのかもしれません。

 

2022.10.20

参考文献

  1. 重篤副作用疾患別対応マニュアル 無顆粒球症