薬剤師の気ままブログ

精神科門前の管理薬剤師。勉強したことの備忘録(薬や病気)やたまに趣味などについて気の向くままに書いていきます。

強迫性障害(OCD:Obsessive-compulsive disorder)についてのまとめ

随時アップデートしつつ強迫性障害についてまとめていきます。

 

疫学・病態

  • 生涯有病率は2%前後
  • 平均発症年齢は20歳前後だが幅広い
  • 男女比はほぼ同等
  • 治療抵抗性が比較的多い
  • セロトニン調節異常が原因で葛藤や衝動のコントロールを行う前頭葉基底核の機能に異常が生じている可能性が示唆されている
  • 自閉スペクトラム症ASD)のDSM-5の診断基準B「行動、興味、または活動の限定された反復的な様式」が強迫症状と類似しており、OCDとASDの併存も指摘されている。ASD合併例では症状に対し不安の介在が見られないケースも多い
  • ASD以外にもうつ病統合失調症摂食障害発達障害等の併存が指摘されている

 

症状

  • 強迫観念:心の中に繰り返し浮かぶイメージ、その観念に基づく行動をせずにはいられない衝動など
  • 強迫行為:観念により生じた不安を解消するための反復的な行動
  • 不潔恐怖:手が汚れているのではないか(など。下記は全て例)
  • 洗浄強迫:手を洗い続ける、掃除を繰り返す
  • 加害不安:誰かに危害を加えたかもしれない、車で人を轢いたかもしれない
  • 過失不安:鍵をかけ忘れたかもしれない、火を消し忘れたかもしれない
  • 確認強迫:確認せずにいられない
  • 強迫性緩慢:日常動作を納得するまで長時間繰り返すため、他社からは動作がゆっくりしているように見える
  • 数へのこだわり:不吉な数字にかかわることを避ける
  • その他:物の位置の対称性、文章の正確性へのこだわり、無意味な行動の反復、価値観喪失に伴うためこみ、性的・宗教的な思考へのとらわれ
  • 基本的には強迫観念が非現実的で不合理だと自覚しているが、症状への不合理感が失われ妄想に近い思考を伴うものもある
  • 強迫観念が生じ不安になる→不安解消のため強迫行為を行う→一時的に不安が解消→またすぐに強迫観念が生じる→強迫行為を行う→…の負のループに陥り、徐々に症状がエスカレートしていく
  • 強迫行為は日常生活上の動作の延長線上にあるものも多く、完全に排除できない
  • 家族へ確認行為を行わせるなど、周囲の人への巻き込みもある

 

治療

  • 薬物療法(SRI:SSRIクロミプラミン)と認知行動療法(CBT:Cognitive-Behavioral-Therapy)が主。難治例では抗精神病薬の少量付加推奨
  • CBTでは曝露反応妨害法(ERP:Exposure and Response Prevention)が有効
  • ERP:強迫観念により生じる不安を解消するための強迫行為を我慢してもらい、行為を行わなくても不安、不快感が軽減することを体験させ慣れてもらう
  • ASDでない神経症的なOCDでは症状に不安が伴うためERPによる不安軽減が有効だが、ASDではこだわりや過剰な儀式化が主体で不安を伴わないためERPの有効性は低い。
  • 薬物治療:SSRI(推奨grade A1 エスシタロプラム10~20mg、フルボキサミン100~300mg、パロキセチン20~60mg、セルトラリン50~200mg)、クロミプラミン(A2 75~300mg)、ミルタザピン(B3 30~60mg)(文献2)
  • 薬物治療②:アリピプラゾール(C1)、ニコチンガム(C1)(2)
  • 治療抵抗性への薬物治療:SSRI orクロミプラミンへの非定型抗精神病薬(アリピプラゾール、オランザピン、ペロスピロン、クエチアピン、リスペリドン)の付加、SSRIクロミプラミンの併用、クロミプラミンへの炭酸リチウム付加、SSRIへのトピラマート付加、リルゾール、メマンチン、(全てC1)、ナルトレキソン(C2)(1)
  • 日本での適応:フルボキサミン(最大150mg/day適宜増減、小児は最大150mg/day)、パロキセチン(最大50mg/day)のみ
  • 効果発現には高用量のSRIが必要
  • SRIへの反応率は40~60%で、反応群の多くも完全寛解に至らない(3)
  • NNT(治療必要数 何人に1人効果が出るか):SSRI通常量単剤→5、SSRI中~高用量→13~15、SSRIへの抗精神病薬の少量付加→4.6(4)
  • ASDベースのOCDではSSRIの有効性は低い(不安が伴わないため)が、チック症の併存がある場合は抗精神病薬の有効性が高い

 

処方例

 

 

参考文献

  1. Treatment of anxiety, obsessive-compulsive and posttraumatic
    stress disorders (2008)(WFSBP The World Journal of Biological Psychiatry, 2008; 9(4): 248-312)
  2. Pharmacological treatment of anxiety, obsessive-compulsive disorder and posttraumatic stress disorder in primary care (2012)(WFSBP International Journal of Psychiatry in Clinical Practice, 2012; 16: 77–84)
  3. Treatment of Obsessive-Compulsive Disorder(CNS Spectrums , Volume 12 , supplement S3: From Obsessive-Compulsive Spectrum to Obsessive-Compulsive Disorders: The Cape Town Consensus Statement , February 2007 , pp. 28 - 35)
  4. Pharmacological treatment of obsessive-compulsive disorder(Psychiatr Clin North Am. 2014 Sep;37(3):375-91. doi: 10.1016/j.psc.2014.05.006. Epub 2014 Jul 24. PMID: 25150568)