薬剤師の気ままブログ

精神科門前の管理薬剤師。勉強したことの備忘録(薬や病気)やたまに趣味などについて気の向くままに書いていきます。

ベルソムラ(スボレキサント)はおねしょを改善する

小児へのスボレキサントの使用について調べている中で、スボレキサントで難治性の夜尿症が改善した症例報告を発見しました。

 

夜尿症とは

睡眠中に不随意に尿を漏らすもの。細かい定義はDSM-5、ICD-10など複数あるようです。小児の小学校入学時の有病率は10%超と言われています。

原因は①ADH分泌低下、尿中Ca排泄増加、糸球体濾過の日内変動の異常、飲水過剰などによる夜間多尿、②排尿筋抑制のサーカディアンリズムの欠陥などによる排尿筋過活動、③覚醒閾値上昇(睡眠が深い)、④発達の遅れ、⑤遺伝的素因などが挙げられています。

治療は生活指導、行動療法、アラーム療法、薬物治療などが行われます。

生活指導:夜尿の記録を作らせる、夕食後の水分制限、就寝前の完全排尿、睡眠中の寒さや冷えから守る、など

行動療法:夜尿がない日にごほうびをあげる、水分制限、膀胱訓練など

アラーム療法:水分を完治するセンサーを下着の中に入れ、夜尿を完治するとアラームが鳴る。本人に夜尿を気づかせ、トイレに行くか我慢するかできるようにする

薬物治療:デスモプレシン、抗コリン薬、三環系抗うつ薬漢方薬(白虎加人参湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯等)など

 

論文(文献2)

P(Patient)

正常発達の難治性夜尿症の12歳男性

過去に行動療法、アラーム療法、デスモプレシン、抗コリン薬、三環系抗うつ薬漢方薬無効

I(Intervention)

スボレキサントの投与

3.75mg→7.5mg→11.25mgへ2週間毎に増量

体重40kg到達後に15mgへ増量

C(Comparisons)

なし

O(Outcome)

夜尿の頻度が減少

14回/14日(100%)→5回/14日(35.7%)

 

感想・考察

スボレキサント3.75mg開始初日から、「生まれて始めておねしょをしなかった」と訴えているのがとても印象的です。夜尿症患者の根本的な病因は覚醒機能の障害と膀胱の不安定さであるとの報告(3)や、夜尿はノンレム睡眠にみられるという報告(4)などがあるため、スボレキサント投与で睡眠の構造を変化させることによる夜尿の改善、というのは理にかなっているのかもしれません。この論文は症例報告なので、使ってみたら効いた!くらいのものなのかなと思ったら、スボレキサント投与で夜尿改善→中止で増悪を2回繰り返しており、再現性があり信頼できるデータなのかなと思います。

 

参考文献

  1. 夜尿症 診療ガイドライン2016
  2. Suvorexant improves intractable nocturnal enuresis by altering sleep architecture(BMJ Case Rep. 2021 Mar 16;14(3):e239621.doi: 10.1136/bcr-2020-239621. PMID: 33727289)
  3. Depth of sleep and sleep habits among enuretic and incontinent children(Acta Paediatr. 1999 Jul;88(7):748-52. PMID: 10447134)
  4. Sleep of children with enuresis: a polysomnographic study(Pediatrics. 1999 Jun;103(6 Pt 1):1193-7.doi: 10.1542/peds.103.6.1193.)