薬剤師の気ままブログ

精神科門前の管理薬剤師。主に勉強したことの備忘録(薬や病気)、たまに趣味などについてゆるめに書いていきます。

ニュープロパッチ(ロチゴチン)とドパミン受容体アゴニストの副作用などについて

最近久しぶりにニュープロパッチを触る機会があったので、復習のためにニュープロパッチについてまとめます。

 

 

まずは基本情報から。

基本情報

構造式

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非麦角系のため麦角アルカロイド特有の構造はありません

 

作用機序

ドパミン受容体アゴニスト(D1~D5すべて)

パーキンソン病では黒質線条体ドパミン神経のシナプス後膜のD2受容体を刺激し、抗パーキンソン病作用を示す

 

効能・効果

  • パーキンソン病(2.25mg~18mgまですべての規格)
  • 中等度から高度の特発性レストレスレッグス症候群(2.25mg、4.5mgのみ)

各疾患の最大投与量設定の関係により規格によって適応症が異なっている。

 

用法・用量

  • パーキンソン病:1日1回4.5 mg/日から開始。増量は1週間毎に4.5 mgずつ。適宜増減。最大量は36 mg。 24時間毎に貼り替える。 
  • レストレスレッグス症候群:1日1回2.25mg/日から開始。増量は1週間以上あけて2.25 mgずつ。適宜増減。最大量は6.75mg。 24時間毎に貼り替える。 

 

禁忌

  • 過敏症
  • 妊娠:動物実験において、プロラクチン低下に関連した生殖能の低下、授乳障害による発育低下などが報告されている

 

使い方

貼付部位

肩、上腕部、腹部、側腹部、臀部、大腿部のいずれかの正常部位

貼付部位は自分でも貼りやすい部位として選択された

18mg/dayを貼付した場合、側腹部を100%とした相対的バイオアベイラビリティ(AUCt,ss)は腹部79.4%、大腿部80.8%、上腕101.4%、肩103.8%、臀部108.7%

メーカーは貼付部位の変更による相対的バイオアベイラビリティに明らかな差はないとしているが、腹部、大腿部はAUCが20%程度低下している。いまいち効きが悪い場合は腹部、大腿部は避けたほうが良いかもしれない。

 

入浴は

貼ったままの入浴は可能

貼付薬は一般的に加温や体温上昇などにより吸収量が増大する可能性がある。別薬品だが、文献3ではフェンタニル経皮吸収型製剤貼付中のカテーテル感染疑いに伴う急激な体温上昇(膀胱温40℃)により意識レベル低下(JCS10~20)が生じ、ナロキソンで改善したことから、発熱によるフェンタニルの吸収量増加が疑われている。

ただし、入浴による一時的なAUC上昇の可能性はあるものの、一般的には何時間も入浴し製剤が加温されることはなく、フェンタニル等の製剤を除けば大きな影響はないとの見解もある。

貼り替えタイミングを入浴後にするメリットは大きい。貼付したまま入浴し、入浴後に貼り替えることで貼り替え忘れを防ぐことができる、ふやかしてはがすことで皮膚への負担が少ない、貼付部位を清潔に保つことができる、保湿のタイミングとして都合がよい、などの利点がある。

 

貼り替え忘れた時は

気がついたときに貼り替え、次回はいつもの時間にまた貼り替える

 

MRI検査、AED使用時などははがす

支持体にアルミニウムが含まれているため、貼付部位のやけどを避けるために電気的除細動、自動体外式除細動器AED)、MRI(核磁気共鳴画像法)の際ははがさなければならない。AED使用時に薬剤が通電パッドの下に貼られていると、電極から心臓への通電エネルギーが遮断され火傷を生じる可能性がある。

また、温度が上昇する可能性があるためジアテルミー(高周波療法)を受ける場合も事前にはがす必要がある。

製剤には大きく「AED使用時はがす」と記載されているのでわかりやすい。

 

調剤時

複数の製剤や規格を組み合わせてよいか

ニュープロパッチの組み合わせで吸収量に差は出ないため、処方された用量に合うように組み合わせてOK

例1)4.5mg→2.25mgを2枚でOK。

例2)36mg→13.5mgを2枚と9mを1枚でも、9mgを4枚でもOK

ただし2枚以上貼る場合、貼ってから24時間後も成分がパッチに残っているため、はがし忘れのないように近くの部位に貼るのがよい。

 

ニュープロと他薬剤の比較

ムズムズ脚(RLS)では他にビ・シフロール(プラミペキソール)、レグナイト(ガバペンチンエナカルビル)が用いられる。ビ・シフロールはTmaxが1~2時間程度、T1/2が6~7時間程度、レグナイトはTmaxが5時間程度、T1/2が5時間程度であるが、ニュープロは1日1回の貼付で24時間効果が持続するため、日中の症状へも有効性が高いと考えられる。

また、ビ・シフロール、レグナイトが腎排泄であるのに対しニュープロは肝代謝。他2剤が腎機能低下の場合に減量調整が必要、また禁忌であるのに対し、ニュープロは腎機能低下から透析まで腎機能正常者と同じく使用することができる。

パーキンソン病では嚥下機能や消化管機能が低下する。ニュープロは貼付剤のため内服薬と比べそれらが低下した患者に適している。

また、効果時間が長く安定していることから、夜間や早朝の運動症状の改善に有用と考えられている。海外の治験では早朝の運動症状や睡眠障害を有意に改善する効果が示された。

 

皮膚障害

貼付剤に皮膚障害はつきもの。粘着剤のシリコンにより角質がはがれる、ロチゴチンが皮膚へ長時間接触する、などの理由により皮膚障害が起きる

国内臨床試験時の適用部位反応の頻度は49.4%

予防:貼り替え時はゆっくりはがす、貼る場所を毎回変える、赤くなっている部位には貼らない、皮膚が乾燥すると刺激に弱くなるため保湿を心がける

 

薬剤離脱症候群

ドパミンアゴニストは黒質線条体系のドパミン受容体を刺激することでパーキンソニズムを改善するが,理論的には中脳皮質辺縁系も刺激する。アンフェタミンのような中脳皮質辺縁系を刺激する薬剤と同様に離脱症状(DAWS:dopamine agonist withdrawal syndrome)が生じる可能性がある。

文献4では、ドパミンアゴニストを減量した26人のパーキンソン病患者のうち5人(19%)でDAWSが生じている。DAWSは他薬剤の離脱症状と類似しており、具体的な症状は不安、パニック発作広場恐怖症うつ状態、不快気分、発汗、疲労、疼痛、起立性低血圧、薬物渇望。DAWSが生じた症例は全てドパミンアゴニストに関連した衝動制御障害(次項)が発現していた、症状発現時のDA内服量が多かった、などの特徴が見られている。

急激な減量、中止により悪性症候群やDAWSのリスクが生じるため、投薬中止は漸減が勧められている。目安はパーキンソン病では1日おきに4.5mg、ムズムズ脚では1日おきに2.25mgずつ減量とのこと。

 

衝動制御障害

DAWSと同様に、ドパミンアゴニスト共通の有害事象として衝動制御障害(病的賭博、病的性欲亢進、強迫性購買、暴食等)が報告されている。

病的賭博の発症には大脳辺縁系側坐核のD3受容体への刺激が関与していると考えられている。D3受容体が刺激されると不安感が減り,気分が明るくなることが知られているが,これが過剰になると不安を感じないがために衝動を抑えられなくなり,アルコール多飲や多買、病的性欲亢進、病的賭博等の衝動抑制障害が生じるとされている。

FDAのデータベースを用いた研究では、D3受容体への親和性が高いプラミペキソール、ロピニロールで衝動制御障害への強いシグナルが検出された。プラミペキソールのPRR(proportional reporting ratio)が455.9、ロピニロールが152.5のところロチゴチンは36.0であり、上記2薬剤と比較するとシグナルは弱い。D3受容体の部分アゴニストであるアリピプラゾールも、シグナルは弱い(PRR = 8.6)が検出されている(文献6)。

 

警告:突発的睡眠

ドパミンアゴニスト共通の有害事象で、前兆(傾眠や過度の眠気)のない突発的睡眠及び傾眠等により自動車事故を起こした症例が報告されている。機序は明らかにはなっていない。

承認時までの国内臨床試験では突発的睡眠は0.8%、傾眠は10.8%。突発的睡眠は、1年投与の国内臨床試験では多くが25週目以降に出現している。

文献7では、ドパミンアゴニスト開始30日~3年(増量後1ヶ月)経過後の突発的睡眠の症例が報告されている。夜間睡眠良好や、事故直前の眠気のない状態からの突然の意識消失、睡眠の症例が示されている。

 

 

参考文献

  1. ニュープロパッチ インタビューフォーム
  2. 大塚製薬 医療関係者向け情報サイト ニュープロパッチ Q&A
  3. 日本ペインクリニック学会誌 Vol.27 No.2,2020
  4. Dopamine agonist withdrawal syndrome in Parkinson disease(Arch Neurol. 2010 Jan;67(1):58-63. doi:10.1001/archneurol.2009.294. PMID: 20065130)
  5. 日内会誌 98:147~149,2009
  6. Reports of pathological gambling, hypersexuality, and compulsive shopping associated with dopamine receptor agonist drugs(JAMA Intern Med. 2014 Dec;174(12):1930-3.doi: 10.1001/jamainternmed.2014.5262.  PMID: 25329919)
  7. 非麦角系ドパミンアゴニストによる突発的睡眠等について(自動車の運転等をさせないことの患者説明の徹底)(医薬品・医療機器等安全性情報 No.245 2008年3月)