薬剤師の気ままブログ

精神科門前の管理薬剤師。主に勉強したことの備忘録(薬や病気)、たまに趣味などについてゆるめに書いていきます。

モルヒネ100倍量投与のニュースと過去の医療事故(ピルシカイニド)の勉強

 

今回のモルヒネの事故の概要と考察

93歳男性。主訴は息苦しさ。現病歴は心不全。必要量100倍のモルヒネの内服薬を処方され、投与1週間後に死亡。処方医と薬剤師が業務上過失致死の疑いで書類送検。現在わかっている情報はこれだけです。2021年2月の事故ですが、詳しくは明らかになっていません。

内服で100倍量とのことなので、おそらく散剤でしょう。単なるgとmgの間違いであれば1000倍の差になるはずなので、希釈率の差でしょうか。散剤にはモルヒネ原末と細粒2%、6%があります。モルヒネ細粒2% 0.5g(成分量10mg)を処方しようとして間違って原末を出して0.5g=500mgになってしまった、とかはありそうです。これだと50倍ですけどね。

調剤過誤については全てが明日は我が身だと思っています。ミスをしない人間はいません。過去の教訓を活かして気を引き締めていくのみです。今回の事例も詳細が明らかになったら経緯を確認し、自分の業務を見返すきっかけにしたいところです。

 

心不全へのモルヒネ

呼吸困難は終末期心不全の主要な症状の1つであり、60~88%に認められ、少量モルヒネの有効性が報告されています。適切な用量については十分に検討されていませんが、2の文献ではNYHA Ⅲ~Ⅳの慢性心不全の呼吸困難に対しモルヒネ5mgを1日4回 4日間投与し、呼吸困難の改善が見られたとされています。

作用機序は詳しくわかっていませんが、中枢神経系での知覚低下、延髄呼吸中枢のCO2に対する感受性低下や呼吸リズムを抑制し呼吸数を減少させることによる呼吸仕事量の軽減、有効な深呼吸の確保、抗不安作用などが関係していると推測されています。

今回のケースも主訴息苦しさ、心不全の既往のため末期心不全への使用だったのかもしれません。仮にモルヒネ原末を0.5gで処方してしまった場合、成分量500mgとなり必要量の100倍となってしまう可能性があります。

 

ピルシカイニドの死亡事故

薬での医療事故といえば、2021年のピルシカイニドでの死亡事故のニュースが記憶に新しいです。

概要は、

80歳代女性。病歴は腎不全(透析)、発作性心房細動等。今回は転倒にて大腿骨骨折で入院。入院前からアプリンジンを服用していたが、採用がないためピルシカイニドへ代替し入院4日目から変更。入院4日目に骨折のOpe。入院10日目に心室頻拍が出現したが薬物治療で軽快。入院11日目に再び心室頻拍が出現。薬物治療で改善し死亡。

です。

ピルシカイニドは透析時に減量調整が必要ですが、通常量を投与したことで過量となってしまい、心室頻拍で死亡してしまいました。

 

ピルシカイニドの過量投与

インタビューフォームには下記のように記載されています。

13. 過量投与

13.1 症状

過量投与又は高度の腎機能障害により、本剤の血中濃度が上昇した場合、刺激伝導障害(著明なQRS幅の増大等)、心停止、心不全心室細動心室頻拍(Torsades de pointesを含む)、洞停止、徐脈、ショック、失神、血圧低下等の循環器障害、構語障害等の精神・神経障害を引き起こすことがある。

解説

本剤が過量となった場合、本剤の薬理作用の延長と考えられる伝導障害(著明なQRS幅の増大等)の心電図異常が認められるほか、心停止、心不全心室細動心室頻拍(Torsades de pointesを含む)等の重篤心室不整脈、徐脈、ショック、血圧低下等の循環器障害、また、極めて血中濃度が高い場合は、構語障害等の精神・神経障害が認められることがあると報告されている。 

 

症例報告(8)では高齢者の脱水→急性腎前性腎不全→高カリウム血症+ピルシカイニド中毒による高度徐脈(28/分)+QRS幅高度延長(188msec)が報告されています。透析だけでなく夏季の脱水などにも注意が必要であることが読み取れます。この文献においても、Ⅰc群抗不整脈薬による多形性心室頻拍のメカニズムは、Naチャネル遮断による高度の伝導障害の可能性が高いとされています。

 

ピルシカイニドとアプリンジンの比較

腎機能時の減量と代謝、排泄

4のガイドラインによると、アプリンジンは腎機能低下~透析まで全て腎機能正常者と同じ用量での使用が可能です。一方ピルシカイニドは通常量150~225mg 分3のところ、GFR or CCr30~59では50mg 分1、15~29では25mg 分1、15未満では1回25mgを48時間毎と減量調整が必要となっています。透析性も低い(20%)ため、1回25mg48時間毎からの開始が必要です。

アプリンジンの主代謝は肝臓です。主要代謝物はデスエチル体と水酸化体。水酸化体は抱合され腎臓から排泄されるようですが、活性代謝物はデスエチル体のみ(アプリンジンと同等の抗不整脈作用あり)なので腎機能低下時も問題ないようです。なので減量調整不要なのですね。

ピルシカイニドは主に腎排泄。24時間内尿中未変化体排泄率は75~86%で、血液透析での除去率は4時間で25%となっています。

 

不整脈薬としての比較

Vaughan Williams分類においてアプリンジンはⅠb群、ピルシカイニドはIc群に分類されています。

Ⅰb群はNaチャネル遮断、Kチャネル開放の作用を持ち、活動電位持続時間、不応期が短縮(PR間隔・QRS幅不変、QT短縮)。チャネルへの結合、解離の速度が速いためPR間隔・QRS幅には影響しないと言われています。

Ic群はNaチャネル遮断作用がメインでKチャネルには影響しません。PR間隔、QRS幅は大きく延長させますがQT間隔には影響しません。PR間隔・QRS幅の延長はチャネルへの結合、解離がⅠ群の中で最も遅いためと言われています。

 

Sicilian Gambitでの比較は下記です。

・アプリンジン

Naチャネル:高い遮断作用。結合、解離速度中間。不活性化チャネルブロッカー(不活性化状態のイオンチャネルをブロック)

低い遮断作用:Ca、K、If

臨床効果:左室機能→、洞調律→、心外性は中等度

心電図所見:PR↑、QRS↑、JT

 

・ピルシカイニド

Naチャネル:高い遮断作用。結合、解離速度遅い。活性化チャネルブロッカー(活性化状態のイオンチャネルをブロック)

Naチャネル以外の阻害作用なし

臨床効果:左室機能↓→、洞調律→、心外性は低い

心電図所見:PR↑、QRS↑

 

Naチャネルブロッカーとしてのざっくりとした薬理作用は同じですが、細かいところは同効薬ではなさそうです。

採用がないから変更、というのは病院ならではですね。薬局で同じようなことをするとめちゃめちゃ怒られると思います。患者さんの同意を取ったうえでトローチのハッカ味とストロベリー味を替えようとするだけでも怒られますからね。

 

不整脈ガイドライン

発作性心房細動とは治療の有無にかかわらず7日以内に洞調律に復する心房細動と定義されています。

発作性心房細動の中で器質的心疾患がなく、持続が短いものはNaチャネルブロッカーの効果が高いとされ、発作時の優先的な投与が推奨されています。第一選択としてはピルシカイニド、シベンゾリン、プロパフェノン、フレカイニドが挙げられています。

器質的心疾患を持たない場合の再発予防としては、Kチャネルへの作用を持つシベンゾリンは長時間持続するケースに効果的、β遮断作用を持つプロパフェノンは昼間型により効果的な可能性がある、などはありますが、普遍的な効果が期待できるのはNaチャネル遮断作用と言われています。器質的心疾患のない場合の再発予防の選択肢としてはピルシカイニド、シベンゾリン 、プロパフェノン 、フレカイニド、べプリジルが挙げられています。

 

Naチャネル以外への作用は違えど、アプリンジン→ピルシカイニドへの変更は治療上妥当のようです。ピルシカイニドの方がピュアなNaチャネルブロッカーである分、心外副作用の可能性が低くてむしろ良い投薬なのかもしれません。

 

 

参考文献

  1. 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
  2. Morphine for the relief of breathlessness in patients with chronic heart failure--a pilot study(Eur J Heart Fail. 2002 Dec;4(6):753-6.doi: 10.1016/s1388-9842(02)00158-7. PMID: 12453546)
  3. がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン2016 日本緩和医療学会
  4. 薬剤性腎障害診療ガイドライン2016
  5. アスペノンカプセル インタビューフォーム
  6. サンリズムカプセル インタビューフォーム
  7. 2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン
  8. 高齢者で認められたピルシカイニド中毒に対し緊急血液透析で救命し得た1例(心臓 Vol.46 SUPPL.2  2014)

 

消費者物価指数(2022.5)からインフレの動向を見ます

円安やウクライナ戦争などの影響により様々な物の価格が上昇しています。実際に生活していてもインフレの影響は強く感じるところがあり、暮らしに必要なものの値段がどれも上がっていて、生活を圧迫している感覚があります。

実際何がどれくらいインフレしているのかを消費者物価指数(1)を見て調べてみようと思います。

 

2022年5月の概要は下記です。

総合指数は2020年の物価を100とした時に101.8%。前年同月比+2.5%、前月比+0.2%。生鮮食品を除く総合指数は101.6。生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は100.1。

総合指数の上昇に大きく寄与した内訳(中分類)は、生鮮野菜 13.1%、生鮮魚介 12.2%、調理食品 3.4%、生鮮果物 11.0%、外食 2.2%、菓子類 3.2%、油脂・調味料 6.3%、設備修繕・維持 2.9%、電気代 18.6%、ガス代 17.0%、他の光熱 25.1%、家庭用耐久財 7.4%、自動車等関係費 3.0%、教養娯楽サービス 1.5%

物価上昇に寄与した具体的な品目例は、たまねぎ 125.4%、まぐろ 16.6%、調理カレー 11.4% 、りんご 34.0%、ハンバーガー(外食)7.6%、ポテトチップス 9.0%、食用油 36.2%、都市ガス代 22.3%、灯油 25.1%、ルームエアコン 11.0%、ガソリン 13.1%など。

物価上昇幅の大きいエネルギーの前年同月比の詳細は、エネルギー全体として17.1%、電気代18.6%、都市ガス22.3%、プロパンガス8.6%、灯油25.1%、ガソリン13.1%。

軒並み物価が上昇しているが、通信料(携帯電話)-22.5%、酒類-0.3%などは低下。

 

 

感想と考察

消費者物価指数はマーケット・バスケット方式で計算されています。マーケット・バスケット方式とは、あらゆるサービスや品物をある程度均等に購入した時の平均的な物価です。あくまで平均なので、例えば今だとスーパーで野菜を買って自炊する人はインフレの影響を強く受けるだろうし、外食が多い人はインフレの影響を受けにくいでしょう。YouTubeの某ライオンの学長の仰る通りインフレとは個人的なもので、どういう生活をしているかで差が出てくるものです。

(2)では、2010年を基準とした時の2017年の物価上昇率において、「60歳以上」と「39歳以下」で約2%の差がついています。差が出た要因としては、高齢者は自炊が多い(生鮮食品+18.3%)、持ち家が多い(住宅リフォーム+6.1%)、固定電話が多い(+5.0%)などが挙げられています。どういう暮らしをするかによってインフレの影響に差が出るわかりやすい例だと思います。

 

数値を見ると、エネルギーと生鮮食品類の物価上昇が著しい結果になっています。逆に生鮮食品とエネルギーを除いた指数は100.1なので、それらを省けば物価上昇はほぼありません。

エネルギーには電気代、ガス代が含まれるため、ほぼ全員物価上昇の影響は避けられません。それを省くと、現在インフレの影響を強く受けるのは車を移動手段とする方、生鮮食品を買って自炊をする方ですね。外食(1.8%)や調理食品(3.5%)も上昇していますが、生鮮食品ほどは価格が高騰していません。

ガソリンは物価がかなり上昇していますが、3月をピークとして徐々に下落傾向ではあります。

 

なるべくインフレの影響を受けずに上手く生活していきたいものです。

 

 

参考文献

  1. 2020年基準 消費者物価指数 全国 2022年(令和4年)5月分
  2. ニッセイ基礎研究所 高齢者を直撃する物価上昇~世代間で格差~(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=58861?site=nli)

「家計が値上げを受け入れている」発言とインフレに強い資産、弱い資産

2022年6月6日、日本銀行の黒田総裁が「日本の家計の値上げ許容度も高まってきている」と発言してTwitterなどが炎上していました。この言葉だけを聞くと、私の目線からも苛立ちを感じます。国民の生活感覚とズレすぎてますからね。まして高給取りの立場からこんなことを言われると、「上級国民には庶民の気持ちはわからないんですね?」と思われても仕方がないと思います。ただしメディアは視聴率を稼ぐため、注目を浴びそうな発言を意図的に切り取って炎上させることも多いので、実際はどうだったのかなとも思います。

この発言の根拠となったのは東京大学大学院の渡辺努教授らによる「5か国の家計を対象としたインフレ予想調査」(2022年5月実施分)のようです。「いつも行くスーパーで買う物の値段が10%上がったらどうするか」という問いに対し、2021年8月は「そのままその店で買う」が43%、「違う店に変える」が57%でしたが、2022年4月では「そのままその店で買う」が56%、「違う店に変える」が44%でした。「違う店に変える」の割合が13%減少しており、「そのままその店で買う」人の割合が過半数を越えていることから、「日本の家計の値上げ耐性が高まった」と結論付けています。

炎上したのでこの発言は撤回されていますが、日本国民の値上げ耐性が上がったと読み取れるデータが出てしまったので、政府としては今後インフレに舵を取って行く可能性が高い状況となっています。

なので自分の資産を守るため、インフレに強い資産、弱い資産をまとめていきたいと思います。

 

 

インフレに強い資産

金は実物その物に価値があり、しかもその価値は世界共通です。インフレによってお金の価値が下がり、たとえ札束が紙切れになったとしても金の価値は変わりません。株式や紙幣は発行体が破産すると価値がなくなりますが、金は現物があるので無価値にはなりません。現物がある安心感から、戦争など世の中が混乱した時に人気が出て価格が上昇する傾向があり、「有事の金」と呼ばれます。

金に投資をする方法は、延べ棒や金貨を実際に購入する「現物購入」の他、投資信託ETFにより間接的に保有する方法があります。

 

不動産

不動産も現物であるためインフレに強い傾向があります。物の値段が上がる時は物を持っている方が得ということです。さらにエネルギーや原材料の価格も上がるため建築費が上がり、不動産現物の物価上昇とともにダブルで不動産価格の上昇に寄与します。

不動産の現物を所有し資産とするにはそれなりの資金が必要ですが、こちらも金と同じように投資信託ETFによって少額から、間接的に保有することができます。

 

株式

インフレにより企業が生産する製品やサービスの価格が上昇し、業績が良くなるためインフレに強いと言われています。ただし金融緩和→株価上昇→景気回復→インフレ→金融引き締め→株価下落→不景気→デフレ→金融緩和…といった典型的なサイクルも指摘されており、利上げ局面では注意が必要とされています。

 

外貨

インフレから資産を守るために外貨に投資することは有効とされています。インフレにより日本円の価値が下がると、相対的に外貨の価値が上昇します。

 

インフレに弱い資産

現金・預貯金

インフレに弱い資産の代表となっています。手元のお金の絶対的な金額は変わりませんが、インフレ=物価が上がると物を買うために払うお金が増え、相対的にお金の価値が下がります。

貯金についても金利が0.001%などと非常に低いため、インフレ率と戦うと負けてしまい、相対的に価値が下がります。

インフレ時に資産を現金や貯金のまま放置していると、相対的に価値が下がり資産が目減りしていきます。

 

債券

債券もインフレに弱い資産です。債券は一般的にローリスクローリターンですが、ただでさえ低いリターンがインフレによる物価上昇でさらに相対的に削れてしまいます。

また、株式はインフレにより利益の上昇が期待できますが、債券は利益が増えないこともインフレに弱い1つの要因となっています。利率はお金を貸した時に設定されるものであり、その後インフレになったからといって利息が増えることは基本的にはないからです。

さらに、インフレ時には物価上昇を抑えるために政策金利を上昇する傾向があります。債券価格は金利と逆の値動きをするため、政策上も債券には逆風となっています。

 

貯蓄型保険

定期的な支払いを行って不足の事態に備えることに加え、積み立てによる貯蓄としての機能も備わった「貯蓄型保険」もインフレに弱い傾向があります。昔の貯蓄型保険では返戻率が100%を越えるものもありますが、近年は基本的に100%を切っており、さらにインフレ時は貨幣の価値が下がっているからです。積み立てたお金を受けとる時にはその価値は目減りしています。100%以上の返戻率であっても、インフレによる物価上昇分を越えるほどではないと思われます。

 

参考文献

  1. 「5か国の家計を対象としたインフレ予想調査」(2022年5月実施分)の結果
  2. トウシル インフレと株式投資の関係を整理する 山崎 元

金利とは?政策金利、市場金利について、景気や債券との関係など

世間においてなぜか薬剤師は高給取りのイメージがついていますが、現実的にはそんなことはありません。更に近年は医療費抑制のためにかなり締め付けが厳しくなっており、医薬業界は減収の一方です。

老後2000万円問題なども大きなニュースとなり先行きが不安ですが、銀行預金は超低金利で、一昔前のように貯金だけしておけばよい時代ではなくなってしまいました。

ということでちょこちょことお金の勉強をしています。初心者なりに頑張って調べています。

今回は金利についてです。

 

 

 

 

金利とは

「お金を貸し借りするときの対価」「借りたお金に対する使用料」などと表現することができる。貸借はお金を借りる側の需要によって行われる。借りた側はその資金で事業を行ったり、人を雇ったりすることができるが、貸した側は特にメリットがない。なのでお金を貸してくれたことに対する対価を払う。お金を一定期間貸すことにより、その間にその資金を使って得られたであろう利益を支払うという解釈もある。借りた側の目線だと、お金を貸してくれたことに対するお礼。一般的には金利~%のような割合の形で表す。

 

金利の例

銀行へ貯金をすると年に何回か利息がつく。この利息も金利の1つ。(細かく言うと利息は金額、金利は割合なので違うが。)

銀行に預けたお金はただ貯められているわけでなく、企業などに貸し出されている。銀行は利用者から貯金という形でお金を借り、資金が必要な人に金利をつけて貸し出す。その後、貯金してくれた人にお金を貸してくれた対価として利息を渡す。

 

指標としての金利

上記は「金利」という言葉それ自体の意味。投資をしていると耳にする「金利が上がった・下がった」の「金利」とは、(おそらく)市場金利政策金利のことを差すものと思われる。

 

政策金利・市場金利

政策金利とは、中央銀行(日本なら日本銀行)が一般の銀行にお金を貸す時に受け取る金利政策金利が世間の金利の一番のベースとなる。

市場金利とは、民間の金融機関の金利

政策金利が低いと民間の金融機関は日本銀行から低い金利で資金を調達できるため、企業や個人へも低い金利でお金を貸すことができるようになる(金利が下がる)。逆も然り。

 

金利の変動と需要・供給

物の値段は基本的に需要と供給のバランスで決定する。みんなが欲しいものは値段が高くなるし、要らないものは安くなる。金利も同様。お金を借りたい人が多ければ、多少利子が高くても借りてくれるので金利は上がる。借りたい人が少なければ下がる。

 

金利を「上げる」「下げる」とは?

上のように、金利は基本的には需要と供給のバランスで決まっている。需要がなければ金利は上がらないし、需要があるかどうかは借りる側の問題なので、そこはコントロールできない。

では政府が景気を意図的にコントロールするためにはどうするかというと、政策金利を調整する。

政策金利が下がる→民間の金融金融の金利も下がる→企業は資金調達しやすくなる→経済活動が活発になる→景気が良くなる

政策金利が上がる→民間の金融金融の金利も上がる→企業は資金調達しにくくなる→企業の設備投資などが抑えられる→景気が抑えられる

例えば景気を良くしたい時は政策金利を下げてお金を借りやすくし、利子安くていいからかりて!という形で需要を促していく。

 

景気・物価と金利

金利を意図的に操作する時は上記のように政策金利を調整するが、今度は需要の変化による自然な金利の変動について。

景気

景気が良くなると皆がたくさん物を買うようになる(個人消費が増大)。すると企業も事業拡大や設備投資をするようになり、資金が必要になる(資金需要が増える)。需要が増えるので金利が上がる。逆になると消費者の購買意欲が下がるので企業も事業を縮小し、資金需要が下がるので金利が下がる。

物価

物価とは物の値段のこと。物価が上がる=物の値段が上がると、相対的に今持っているお金の価値が減ってしまう。例えば1個100円のハンバーガーが120円になると、1つのハンバーガーを買うために払うお金が20円分増え、その分損したことになる。お金の価値が100/120=83.3%へ低下したこととなる。

なので、物価が上がると少しでも安い値段で物を買うために買いだめなどが発生し、個人消費が高まるため金利が上昇する。

また、物価が上がると政策は引き締めに動く。物価上昇を抑えるために政策金利を上げるため、どちらにせよ金利は上昇する。

 

金利と債券の関係

金利と債券は逆の動きを見せる。金利が上がれば債券価格(債券が市場で取引される価格)は下がり、金利が下がれば上がる。

例えば債券の利率が1%、銀行の金利が2%の時、債券を持っているより銀行に貯金した方が利息を多くもらえる。というわけで債券の人気(需要)がなくなり価格が下がる(ということだと思う)。

 

そもそも債券とは

債券とはお金を借りたことを証明する借用書のようなもの。お金をかりたい場合は債券=借用書を発行し、債券を購入してもらうことで資金を調達する。債券ではお金を全額返す期限(満期)と利息があらかじめ決められている。

左室駆出率(LVEF)に基づく心不全の分類

私が大学生の時はまだ左室駆出率による心不全の分類は一般的ではなく、心不全の分類はNYHAが主でした。薬剤師として働き始め、しかも内科に関わらなくなってからヘフペフとかヘフレフとか急に言われ、似たようなアルファベット並べられてもよくわかりません。なので一度整理することにします。

 

 

左室駆出率(LVEF)とは

左室駆出率とは心室収縮機能の指標。左室なので心臓のポンプ機能を表す。略はLVEF(Left Ventricle Ejection Fraction)。

心エコー、SPECT、MRIなどで計測することができるが、計測法によりばらつきが出る可能性が示唆されている(1)。また後負荷の影響を強く受けるため、LVEFだけで心室収縮機能を正確に評価はできない。

LVEFは予後の予測に用いることができるが、経過は併存疾患(糖尿病など)にも左右されるため(2)、LVEF単独での予後予測には限界がある。

計算式は下記

LVEF

=(拡張末期容積-収縮末期容積)÷拡張末期容積×100

=1回心拍出量÷拡張末期容積×100

 

LVEFによる分類(発症時)

HFrEF

LVEFの低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction)のこと。読み方はヘフレフ。reducedなので低下、は覚えやすい。日本のガイドラインではLVEF40%未満がHFrEF。

 

HFmrEF

LVEFが軽度低下した心不全(heart failure with mid-range ejection fraction)。読み方はヘフムレフではなくミッドレンジ。rがreducedだったらもっと覚えやすかったかなと思ったけど、境界域という意味でのミッドレンジならイメージしやすいかな。

LVEFは40%以上50%未満。2016年5月に欧州心臓病学会が発表した心不全ガイドラインで新たに加えられた概念。予後に関してなどはまだ研究が不十分。

 

HFpEF

LVEFの保たれた心不全(heart failure with preserved ejection fraction)。pはプリザーブドから。読み方はヘフペフ。定義はLVEF50%以上。有効な治療法が十分に確立されていない。

 

LVEFによる分類(経時的な評価)

LVEFはその時その時で値が変わるもの。時間経過や治療によるLVEFの変化による分類もされている。

 

HFrecEF

LVEFが改善した心不全(heart failure with recovered ejection fraction)。recはrecoveredから。比較的覚えやすい。読み方はリカバード?

治療によってHFrEF→HFmrEF・HFpEF、HFmrEF→HFpEFとなるパターン。予後は比較的良好とされている。

 

HFworEF

LVEFが悪化した心不全(heart failure with worsened ejection fraction)。worはworsenedから。アルファベットがごちゃごちゃ並んでいても、きちんと分解して整理すれば全部理解しやすいのかもしれない。HFworEFは予後不良とされる。

 

HFuncEF

LVEFが変化しない心不全(heart failure with unchanged ejection fraction)。uncはunchangedから。HFpEFの60~90%、HFrEFの60~80%、HFmrEFの30~40%がHFuncEF(変化なし)とされる。HFmrEFはそもそも該当するLVEFのレンジが短く、またLVEFの測定には誤差が大きいため、分類が変化したように見えるのではという意見もある。

 

 

 

参考文献

  1. Variability in Ejection Fraction Measured By Echocardiography, Gated Single-Photon Emission Computed Tomography, and Cardiac Magnetic Resonance in Patients With Coronary Artery Disease and Left Ventricular Dysfunction(JAMA Netw Open. 2018 Aug 3;1(4):e181456.doi: 10.1001/jamanetworkopen.2018.1456. PMID: 30646130)
  2. Beyond ejection fraction: an integrative approach for assessment of cardiac structure and function in heart failure(Eur Heart J. 2016 Jun 1;37(21):1642-50.doi: 10.1093/eurheartj/ehv510. Epub 2015 Sep 28. PMID: 26417058)
  3. 2021年JCS/JHFSガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療

バイアグラ、シアリスのジェネリックは不妊治療目的での保険適応不可

2022年4月1日より不妊治療が保険適用となりました。それに伴って今まで自費でしか処方ができなかったバイアグラシアリスが「勃起不全(満足な性行為を行うに十分な勃起とその維持が出来ない患者)」に対し保険適用可能となり、薬価収載されました。

あまりよく知らず勝手にその後発品も保険適用となるのだと思っていたら、そうではないようです。

ジェネリックについてはとりあえず保険適用とはせず、まずは先発品で一定期間の観察を経た後に検討を行うとのこと。(情報元:製薬企業への問い合わせ)

2022年6月24日現在、シルデナフィルタダラフィル製剤で不妊治療を目的に使用できる製品は下記のみとなっています。

バイアグラ錠25mg

バイアグラ錠50mg

バイアグラODフィルム25mg

バイアグラODフィルム50mg

シアリス錠5mg

シアリス錠10mg

シアリス錠20mg

 

シルデナフィル錠VI、タダラフィル錠CIは今まで通り自費の処方のみ受け付けることができます。

精神科領域の医師国家試験を解いて典型症例を学ぶ②

パート2です。

 

パート1はここです。

sigh56.hatenablog.com

 

 

110I52

62歳の男性。発熱を主訴に来院した。統合失調症のため30歳ころから精神科病院に入退院を繰り返し、ハロペリドール、ゾテピン及びニトラゼパムを服用している。昨日から40℃の発熱と高度の発汗があり心配した家族に付き添われて受診した。家族によれば普段より反応が鈍いという。持参した昨年の健康診断の結果でクレアチニンは0.7mg/dLであった。

来院時、意識レベルはJCSⅡ-10。身長168cm、体重61kg。体温39.0℃。脈拍112/分、整。血圧150/82mmHg。咽頭粘膜に発赤はなく、胸部に異常を認めない。腸雑音は低下している。筋強剛が強くみられる。

尿所見:蛋白1+、潜血2+、沈渣に赤血球1~4個/1視野。血液所見:赤血球304万、Hb 9.5g/dL、Ht 27%、白血球8,800、血小板13万。血液生化学所見:総蛋白6.5g/dL、アルブミン3.6g/dL、AST 225IU/L、ALT 129IU/L、LD 848IU/L(基準176~353)、CK 35,000IU/L(基準30~140)、尿素窒素53mg/dL、クレアチニン2.5mg/dL、Na 135mEq/L、K 5.3mEq/L、Cl 106mEq/L。

適切な対応はどれか。

a. 免疫グロブリン製剤投与

b. ステロイドパルス療法

c. 抗精神病薬の継続

d. 赤血球輸血

e. 大量輸液

 

→JCSは病院ではよく使いますが、薬局ではあまり馴染みがないのでこの機会に勉強してみます。

JCSはJapan Coma Scaleの略で、意識障害のレベルを表します。0、Ⅰ-1~Ⅲ-300の10段階に分けられ、数字が大きくなると障害の程度が高くなります。今回はⅡ-10なので、「刺激で覚醒するが、刺激をやめると眠り込む」+「普通の呼びかけで用意に開眼する」状態です。

統合失調症の既往、抗精神病薬内服、発熱、高度の発汗、意識障害、頻脈、血圧上昇、筋強剛、肝機能障害、腎機能障害、高カリウム、CK高度上昇

抗精神病薬の内服と発熱、発汗、意識障害、筋強剛から悪性症候群と判断できます。

ちょっと横紋筋融解症とも迷いましたが、横紋筋融解症では意識障害や筋強剛は一般的ではありませんでしたね。なんとなく両者似ているのは、悪性症候群に伴い横紋筋融解も生じているからですね。

1の文献では悪性症候群の臨床症状として、精神神経用剤服用下の急性の発熱、意識障害錐体外路症状(筋強剛、振戦、ジストニア、構音障害、嚥下障害、流涎など)、自律神経症状(発汗、頻脈・動悸、血圧の変動、尿閉など)、ミオクローヌス、呼吸不全、重症例での骨格筋組織融解に伴う血中、尿中ミオグロビン高値・腎障害・急性腎不全、代謝性アシドーシス、DICが挙げられています。治療は筋弛緩薬のダントロレンと体液・電解質の補正など。正解はeとなります。

 

 

110I68

18歳の女子。繰り返す授業中の居眠りを主訴に来院した。17歳ころから夜間十分に眠っても日中に強い眠気を感じるようになり、次第に日中の居眠りが増えてきた。半年前から寝つく際に意識はあるのに力が入らず体を動かすことができないという体験が出現するようになった。日中に大笑いすると膝の力が突然に抜けることがある。診察時、意識は清明で神経学的所見に異常を認めない。

この疾患について正しいのはどれか。

a 肥満者に多い。

b 入眠時幻覚が出現する。

c カタレプシーが出現する。

d 精神的なストレスにより生じる。

e 夜間の睡眠時間延長で症状は改善する。

 

→夜間睡眠が十分であるにも関わらず日中の耐え難い眠気があり、睡眠麻痺、情動脱力発作がみられることからナルコレプシーが疑われます。

aは睡眠時無呼吸症候群、dはうつ病?、eは行動誘発性睡眠不足症候群(慢性の睡眠不足)との引っかけでしょうか。

cはカタレプシーとカタプレキシーの引っかけ。カタレプシーは一定の姿勢で固まってしまうもの。カタプレキシーは情動脱力発作のこと。

正解はbです。ナルコレプシーでは入眠時にREM睡眠が出現し、それによる症状。

ナルコレプシーの治療には日中の覚醒にモダフィニルやペモリン、REM睡眠関連症状にはREM睡眠抑制作用のあるクロミプラミンなどが用いられます。

 

 

110I69

50歳の女性。ぼーっとした様子になったことを心配した家族に連れられて来院した。もともと明るい性格で、家事やパートタイムの仕事を活発にこなしていたが、1か月前に長男が大学受験に失敗した頃から「ゆううつだ、元気が出ない」と訴え始めた。家族によると、2週前に自宅近くの診療所を受診し抗うつ薬睡眠薬とを処方されたが改善せず、数日前からぼーっとした様子になったという。家事の手際が普段よりはるかに悪く、時間がかかっている。5年前に人間ドックで慢性甲状腺炎を指摘されていた。診察時、抑うつ気分、意欲の低下および注意機能の低下がみられた。頭部MRIで異常を認めない。脳波検査では基礎波として広汎な8〜9Hzのα波がみられた。

この患者にみられる精神障害として最も考えられるのはどれか。

気分障害

適応障害

解離性障害

d 症状性精神障害

e Alzheimer型認知症

 

うつ病適応障害のような様相を呈していますが、慢性甲状腺炎のキーワードから正解のd症状性精神障害へと繋げたいのだと思います。

甲状腺機能低下でもうつ状態が生じます。実際の精神科外来でもTSH、T3、T4の測定はよく行われています。

問題文では抗うつ薬の投与が2週間行われており無効とのことですが、初診から充分量の抗うつ薬の投与はされないでしょうし、無効の判断は早計に思われます。まあどちらにせよ内科への受診が適切でしょうか。

 

 

111D39

22歳の男性。まとまらない言動を主訴に家族に連れられて来院した。2か月前に大学卒業後就職して普通に働いていたが、1か月前から突然、言動がまとまらなくなった。「何か大変なことが起こりそうな不気味な感じがあり、不安で落ち着かない」「命令する声が聴こえ、誰かに操られている」などと言うようになり自宅で療養していた。診察には素直に応じるが「自分は病気ではない」と言う。身体所見に異常を認めない。

まず導入すべきなのはどれか。

a 心理教育

b 行動療法

c 芸術療法

催眠療法

自律訓練法

 

→連合弛緩、妄想体験、幻聴、作為体験があり統合失調症圏の疾患が疑われます。抗精神病薬の投与が必要ですが選択肢にありません。病識が欠如しているためまずは心理教育でしょうか。いきなり薬を出してもたぶん飲んでくれないですね。

 

 

111D43

5歳の男児。幼稚園で他の児と遊べないことを主訴に両親に連れられて来院した。運動や言語の発達に問題はないが、視線が合いにくく呼びかけにも反応が乏しい。電車の図鑑に熱中しており、多くの車名を覚えている。幼稚園では1人でいることが多い。診察室では会話はできるが落ち着いて座っていることはできず、自分が興味のあることを一方的に話す。身体所見に異常を認めない。

この患児について正しいのはどれか。

 

精神遅滞が併存する。

統合失調症へ移行する。

c 身辺の自立は良好である。

d 社会性の発達は良好である。

e チック障害が併存することは少ない。

 

→コミュニケーションの障害、強いこだわり、多動。ASDが疑われます。正解は消去法でcというところでしょうか。

 

 

111D54

22歳の男性。恐怖感を主訴に来院した。中学3年生の11月、高校受験でストレスを感じていた。そのころ友人と一緒に食事をした際、喉が詰まったような感じで飲み込みにくくなった。その後も友人との食事の際、同じような状態が続き、外食をすると全く食事が喉を通らなくなった。さらに見られているような気がして手が震えるようになった。家では普通に食事ができる。このため、大学入学後は友人と遊ぶことがほとんどない。今回就職を控え、仕事に支障が出るのではないかと考え受診した。診察時、質問に対して的確に回答し、陰うつなところはみられない。「自分でも気にすることはないと分かっているのに、何でこんなに緊張して食事ができないのか分からない」と述べる。神経学的所見を含めて身体所見に異常を認めない。

治療薬として適切なのはどれか。2つ選べ。

抗不安薬

気分安定薬

c 抗Parkinson病薬

d 非定型抗精神病薬

選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI

 

→食事ができないのは友人との外食時のみであり、他人に見られているようで手が震える、という対人時のみでの症状がみられることから社会不安障害が疑われます。不安障害にはSSRI抗不安薬が有効です。

 

 

参考文献

  1. 重篤副作用疾患別対応マニュアル 悪性症候群