薬剤師の気ままブログ

精神科門前の管理薬剤師。勉強したことの備忘録(薬や病気)やたまに趣味などについて気の向くままに書いていきます。

ピオクタニンが使用禁止に

ピオクタニンは商品名で、正式には「0.2%ピオクタニン液」という販売名で販売されている医療用医薬品です。成分名はメチルロザニリン塩化物で、別名をゲンチアナバイオレット、クリスタルバイオレットと呼びます。

ピオクタニンは皮膚の乾燥・殺菌、褥瘡、おむつかぶれに対し軟膏に混ぜて塗る、MRSAへの殺菌効果を期待して塗布する、色素としてスキンマーカーや大腸内視鏡検査の時に見やすくするために使う、などのように使用します。

 

処方例 ピオクタニン亜鉛華軟膏

ゲンチアナバイオレットB  0.05g

亜鉛華軟膏        100g

グリセリン        適量

 

処方例 0.01%ピオクタニンソルベース

メチルロザニリン塩化物   0.05g

ソルベース     全量 500g

 

処方例 0.1%ピオクタニン軟膏

メチルロザニリン塩化物   0.1g

ソルベース        100g

 

様々な用途で用いられてきたピオクタニンですが、海外の動物実験で経口的摂取した場合に発がん性が示唆されたとの報告があり、遺伝毒性および発がん性を否定できないことから使用禁止となることになりました。1)

具体的には、医療用医薬品、要指導医薬品、一般用医薬品医薬部外品、化粧品の全てにおいてメチルロザニリン塩化物を含むものは使用禁止となります。ただし医療用医薬品については、代替品がなく、ベネフィットがリスクを上回る場合に、リスクを患者に説明した場合にのみ使用可能となります。

2021年12月28日の厚労省の通知1)以前に承認された薬品は2022年12月31日までは販売継続可能ですが、2023年1月1日以降はメチルロザニリン塩化物を含む医療用医薬品の製造販売は認められません。

 

 

2022年11月13日

 

参考文献

  1. 薬生安発1228第1号 令和3年12月28日 

拘留中の処方せんの対応

頻度はかなり稀なのですが、警察の方が患者さんの処方せんを持って薬を受け取りに来ることがあります。患者さんが留置所に拘留されている場合です。この場合は通常の保険診療と請求の仕方が異なります。

かなり稀な事なのでどう対応すればよいか忘れてしまうんですよね。そんなに難しい対応ではないんですけど。

先日また拘留中の処方せんの対応をしたので、この機に忘れないようにまとめておきます。

 

 

要点

  • 自費処方せんとして受付
  • 支払いはその場で行わず後日請求する

 

自費処方として受付

拘留中の方の処方せんは保険ではなく、自費となります。その根拠は下記です。

 

第百十八条 被保険者又は被保険者であった者が、次の各号のいずれかに該当する場合には、疾病、負傷又は出産につき、その期間に係る保険給付(傷病手当金及び出産手当金の支給にあっては、厚生労働省令で定める場合に限る。)は、行わない。

一 少年院その他これに準ずる施設に収容されたとき。

二 刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されたとき。

引用:健康保険法

 

第五十九条 被保険者又は被保険者であつた者が、次の各号のいずれかに該当する場合には、その期間に係る療養の給付又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、訪問看護療養費、特別療養費若しくは移送費の支給(以下この節において「療養の給付等」という。)は、行わない。

一 少年院その他これに準ずる施設に収容されたとき。

二 刑事施設、労役場その他これらに準ずる施設に拘禁されたとき。

引用:国民健康保険

 

保険の給付、療養の給付は「行わない」という冷たく突き放したような言葉にはなっていますが、そういう意味ではなく、公費負担となるので保険医療ではないという事です。

 

請求

自費処方せんですが来局時にお金のやり取りはしません。後日談請求書を警察に送付し、口座に振り込まれます。このお金は患者さんが払うわけではなく、公費負担のようです。

請求書には、請求書作成日、患者名、薬局の情報(横判)、請求金額(書類送付の切手代含)、診療内容(レセプト添付でOK)、振込先口座などを記載し、提出します。

 

余談

余談ですが、今回は留置管理官の方からお薬についての問い合わせのお電話もいただきました。質問内容は頓服のリスペリドンの使い方で、ロキソニンの使い方のような簡単なものではなかったので、主治医とお話しして主治医の意向をお伝えしました。

特に悪いことをしていなくても警察の方と話すとなんとなく恐怖感を覚えるものですが、今回担当の留置管理官の方は礼節が取れていて丁寧で、対応しやすくて非常に助かりました。

 

2022.11.10

 

COVID-19とOC、LEP

コロナウイルス感染症では血液凝固が促進し血栓リスクが高まるため、低用量ピルの服用には注意が必要と日本産科婦人科学会から注意喚起がなされていました。(1

現在ウィズコロナ時代を迎えて学会としての推奨が変更となりました。(2

 

2020年8月

  • 重症、または軽症でも呼吸症状を伴う場合、OC・LEPやHRTを中止し、低分子ヘパリンを投与する。
  • 軽症、または無症状の場合、OC・LEPはエストロゲン製剤以外の方法について検討し、HRTは、エストロゲン製剤を中止するか、または経皮製剤を用いる

 

2022年10月

  • 無症状もしくは軽症の場合OC・LEP、HRTを継続して良い
  • 入院を要するCOVID19の中等症、重症ではOC・LEP、HRTは中止
  • ワクチン接種前はOC・LEP、HRTを中止しなくてよい

 

諸外国の対応を参考に低用量ピル継続可否が少し緩くなりました

 

参考文献

  1. 日本産科婦人科学会 2020年8月3日 OC・LEPやHRTなどのエストロゲン製剤使用に関する注意(https://www.jsog.or.jp/modules/committee/index.php?content_id=147)
  2. 日本産科婦人科学会 2022年10月24日 新型コロナウイルス感染症とOC・LEP、HRTに関する考え方 

インクレミン(溶性ピロリン酸第二鉄)について

勉強した内容を簡単にまとめます

 

  • 鉄剤唯一のシロップ。ピロリン酸第二鉄は水に不溶だがクエン酸ナトリウム添加により可溶性に。
  • インクレミン=increase(増加)+amineまたはvitamine。元々は鉄+アミノ酸+ビタミンの混合製剤だったが、1984年の再評価より鉄単味製剤となった。

  • 禁忌:鉄欠乏でない場合(鉄過剰になる)
  • 適応:鉄欠乏性貧血
  • 用法・用量:1歳未満は2~4mL(鉄12~24mg)、1~5歳は3~10mL(鉄18~60mg)、6~15歳は10~15mL(鉄60~90mg)を1日3~4回にわける(適宜増減)
  • 1mLに鉄6mg含有
  • 他の鉄剤とは鉄の価数が違うため換算式はない
  • 併用注意:金属カチオンとの相互作用のある医薬品(テトラサイクリン、セフジニル、ニューキノロンレボチロキシン、タンニン酸アルブミンなど)
  • 鉄の残存により口腔内や便が一過性に黒くなることがある
  • においはさくらんぼ、甘味あり、色はだいだい
  • 光の影響で変色するため遮光保存(ポリ容器、室温、800Luxの条件で30日後に僅かに黒みが増す)
  • 0℃を下回る条件で保管した場合はソルビトールが結晶化して析出する可能性がある

 

2022.11.10

 

参考文献

インクレミンシロップ5%  インタビューフォーム

無顆粒球症について

しばらくの間精神科の薬ばかり触っていますと、久しぶりに内科の薬を触った時に基本的な知識が抜けていることがあります。

先日久しぶりにメルカゾールを触りました。メルカゾールの有名な副作用に無顆粒球症があることは薬剤師であれば誰でも知っているはずです。さすがに無顆粒球症が頭からすっかり消えてしまうことはありませんが、細かいところが抜けていたので、服薬指導前に急いで調べて検査値を確認しました。

精神科の薬の副作用にも無顆粒球症はありますが、ほぼほぼ起こりません。クロルプロマジンでは見たことがありませんし、クロザリルはクリニック外来レベルの病態には使用しませんので、扱ったことはありません。

今回は無顆粒球症について復習します。

 

  • 無顆粒球症とは好中球が著しく減少する副作用
  • 検査値は顆粒球がほぼ0または500/μL以下で、赤血球や血小板の減少はない
  • 自覚症状は突然の高熱、寒気、咽頭
  • 機序はアレルギー性と中毒性がある。アレルギー性では薬品(ハプテン)が好中球に結合し、好中球が貪食されてしまう。中毒性では薬品が顆粒球の前駆細胞を直接障害する。
  • アレルギー性の薬品は抗甲状腺薬、アミノピリン、金製剤など。中毒性はクロルプロマジン、プロカイン、βラクタムなど。
  • リスク因子は高齢、女性、腎機能低下、自己免疫疾患の合併など。
  • 甲状腺薬は用量非依存性、サラゾスルファピリジンは用量依存性。
  • チアマゾール(メルカゾール):用量非依存性。投与開始後3ヶ月以内が高頻度。発症頻度は0.2~0.5%(200人~500人に1人程度)

 

文献に記載されている症例では、チアマゾール15mg投与27日目に39℃台の発熱があり、WBC1100、好中球0%となっています。チアマゾール中止とC-GSF投与により9日で回復が見られています。

目を疑うような検査値です。本当に好中球が0になるんですね。本を読んで勉強しているだけではいまいちピンとこないことも、症例を見ると現実感が持てて良い勉強になります。

メルカゾールの服薬指導ではWBCやSEGまたはNEUT、強い風邪症状の確認が大事ですね。

ちなみに、この症例では皮膚掻痒感に対しメキタジン6mgが投与されています。バセドウ病では甲状腺機能亢進に伴い血管拡張、多汗、皮膚温上昇などが生じ湿疹や掻痒感が出るようです。たしかに熱いお風呂に入ると痒くなったりしますよね。バセドウ病のいわゆる主症状ではないので知りませんでした。良い勉強になりました。

 

クロルプロマジンでの無顆粒球症を見たことがないのは用量依存性だからかもしれません。抗精神病薬の選択肢が多様な現在において、クロルプロマジン統合失調症治療の主剤とすることはほとんどありません。よく使うのは不眠や不安、興奮、衝動性、易怒性などに対して25~150mg程度です。無顆粒球症が発現するくらい、つまり中毒となるくらいの量を使うことがほぼないので無顆粒球症が起きないのかもしれません。

 

2022.10.20

参考文献

  1. 重篤副作用疾患別対応マニュアル 無顆粒球症

後期高齢者の窓口負担割合変更

2022年9月までの場合、75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担割合は大多数が1割、少数の現役並み所得者が3割でした。

これが10月1日からは、75歳以上で一定以上の所得がある方は2割へ変更となります。根拠法は「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)」です。ただし配慮措置があり、2022年10月1日~2025年9月30日までの間、1か月の窓口負担割合の引き上げに伴う負担増加額は3,000円が上限となります。

該当所得の方は後期高齢者の被保険者全体の約20%だそうです。今後、後期高齢者の負担割合は3つにわかれることとなります。

10月は特に、後期高齢者の負担割合に注意して業務に臨まねばなりません。

ロゼレム(ラメルテオン)での眠気持ち越し

そもそも薬理作用が違うとかそういう話はさておき、ロゼレム(ラメルテオン)はベンゾジアゼピンなどと比較して、睡眠薬としてはかなり軽めの印象があります。あくまでざっくりとしたイメージの話です。

睡眠薬なので当然なのですが、服用翌日の眠気持ち越しの訴えがたまにあります。添付文書の副作用報告にも傾眠(1.2%)、眠気(0.1~5%未満)の記載があります。

ただ、経験的にそれほど切れ味のない効果の軽いイメージと、短い半減期(約1時間)から、眠気の持ち越しは副作用というよりは体調的な影響が大きいのかなと勝手に思っていました。うつ状態では症状として起床困難や活動性の低下による日中の眠気があったり、回復初期にはそれまでの睡眠不足を補うための過眠の時期があったりしますしね。あとはそもそも生活リズムが乱れていたり、睡眠時間が十分確保されていなければ、日中すっきり起きていられるはずがないです。

上記のように思っていたのですが、文献1を読んでから、ロゼレムの眠気は理論的にも起こり得るのかもしれないと思うようになりました。

 

文献1と同じように計算してみます。

人生におけるメラトニン分泌のピークは小児期の100pg/mL程度で、さらに加齢により低下していきます。ラメルテオン8mgを服用した時、ラメルテオンの最大血中濃度は1410pg/mL、活性代謝物M-Ⅱは63000pg/mLとなりますが、これは生理的なメラトニン分泌を100pg/mLと仮定したとしても、それぞれMT2受容体への作用は約238倍、約380倍となります*。

メラトニンのMT2受容体へのIC50は904、ラメルテオンは53.4なのでアゴニスト作用は約16.9倍、M-Ⅱのアゴニスト活性はラメルテオンの1/28(文献2)として計算した場合

 

半減期は短くラメルテオンが約1時間、M-Ⅱが約2時間ですが、服用から13時間経過後でもM-Ⅱの血中濃度は約984pg/mL*と高く、小児期のメラトニンのピークの約6倍の作用が残っています。

Tmaxは服用1時間後で、そこから半減期の6倍経過したと考えて計算した場合

 

ロゼレム8mgを1錠内服した場合、生理的なメラトニン活性を遥かに超える薬理作用が日中も残ることとなります。これを考えると、ロゼレムでの眠気持ち越しの訴えも妥当かもしれません。

 

参考文献

  1. https://team.tokyo-med.ac.jp/omh/news/dsps-mel/
  2. ロゼレム錠インタビューフォーム